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授業中のスマホOKに関わる私の決意

2015年09月07日 教育

授業中のスマホOK 意見発表や動画学習、奈良で導入へ

先日、8月31日のTBSニュースや9月1日の新聞トップ記事を飾ったのが奈良市の一条高校でのスマートフォンを使った授業開始のニュースである。(朝日デジタルニュースはこちら)

実はこの試み日本初ではない。2009年に大阪の柴島高校で生徒のマイケータイを使った授業が実践されている。(当時のニュースはこちら)

一条高校も柴島高校も藤原和博さんの授業での実践がスタートである。(東洋経済:いま日本に「スマホで授業」が絶対必要なワケ)

 

実はどちらの高校でも使われるシステムはネットマンのC−Learningだ。

このシステムは15年前の2001年8月に初出荷されている。
<当時のケータイはすべてガラケー(フィーチャーフォン)である。>

2001年佛教大学の西之園晴夫先生にお使いいただき、協調自律学習の基盤として共同研究を10年間にわたり続けてきた。
そして、日本で初めて学生にスマフォを配布した青山学院大学において認知心理学者の佐伯胖先生など多くの先生が活用した。

その後も多くの先生が授業の中の双方向授業の学習支援システムとして活用している。
最近はこのような学習者参加型の授業方法はアクティブラーニングと呼ばれている。

 

1999年当時、私はi-modeを見た時、瞬時に学校で使えると思った。
授業で使われる鉛筆・消しゴム・ノート・教科書と同様に学習端末としてインターネットに繋がるケータイ(今の時代はスマフォ)が使われる時代が必ず来ると予測した。
そして、知識偏重型の教育も終焉を迎えるだろうと思った。

なぜなら既知のことは検索すればいいだけだからだ。
そしてPISA型の学力が注目される時代がすぐ来るだろうと思った。
実際、生きる力に始まり、社会人基礎力や21世紀型学力など、社会に通用する力の育成について日本全体で感心が高まった。

そして2020年。センター試験が廃止され新しい試験制度が始まる。
ちょうど今の中学校1年生が新しい時代の初年度となる。
私が1999年に予測した世界は20年かかり実現しようとしている。

 

しかし本当に気が遠くなるほど遅い。。。

 

よくもまあ、C−Learningをメンテナンスし続け、ユーザーの声を聞きながら、無償バージョンアップを続けてきたものである。
15年間である。
現在、Version 3.72 なので、メジャーバージョンアップが3回。
V3になってからも72回のアップを繰り返してきたことになる。

ちなみにバージョンアップは毎月1、2回必ず行われている。これはビジネスというより、むしろ社会活動であった。

そして熱意がある先生たちとのICT利活用の「共同研究活動」の歴史であった。

めったに自分を褒めるなんてことはないが、諦めず続けていることは自分で自分を褒めたくなる。
褒めるというより、呆れるといったほうがいいか。笑
(実際、累損は半端ない。普通の社長だったらとっくに首だね。。汗)

西之園先生に2002年ごろに言われた、
「永谷君、モバイルと少子化。教育を見る目にこの2つを忘れずにいたらあなたは間違うことがない。」という言葉。
今でも私の格言である。

 

時代はかわり、今回「受験サプリ」を手がけるリクルート系の企業が参入した。
これでICT利活用教育は軌道に乗り、黎明期が過ぎ拡張期に入るであろう。
大きな組織が行う仕事になればITシステムや教材コンテンツはどんどん改良されて良くなるはずである。世界的に通用するものになっていくのは間違いない。

今回の一条高校の試みは単なる協調学習やアクティブラーニングを一歩進めて個々の習熟度に応じるアダプティブラーニングへのチャレンジとなっている。

私たちは、スタートアップの役目が果たせたという自負がある。
誰かがやるならそれはそれでよい。教育が良くなればそれでいいのだから。

 

ではこれからは、私たちはどこで役に立つことができるだろうか。

 

C-LearningのCは3つのコンセプトがある。
一つ目は、Communication
教員と生徒をつなげる。
(これは今、実現した)

二つ目は、Collaboration
教員と教員、学校と学校をつなげる。
(ここが当面のテーマ)

三つ目は、Community
生徒と生徒を直接つなげる。
(これはちょっと先の未来型)

当面のテーマである、二つ目のCの、
Collaboration-Learning。
すなわち「教員同士をどのようにつなげるか」である。

それぞれの学校には素晴らしい授業を行っている教員がたくさんいる。
しかしその教員のノウハウが学校を超えて流通することは稀であり、そのような時間もない。
一方で教育の問題は共通することも多い。

 

ではどうしたらつなげることができるか。

 

ケータイ活用研究会を長年支援し、研究会の実施を通じてICT利活用教育の共有を図ってきたが、どうしても忙しい教員をアナログの場だけでつなげるには限界がある。

そこで私は今回、長年理事長を務めてきたNPO人材育成マネジメント研究会を名称変更し、NPO学習分析学会を立ち上げた。
理事長は上智大学の田村恭久先生である。

この学会は、学習者(児童/生徒/学生/受講者)の学習活動を記録・分析し、その結果を役立てる Learning Analyticsに関する調査・研究・普及啓蒙を目的として作られた。
この学会では学習分析を行った論文集・学会誌を発刊していく予定である。
学校関係者はもちろん、企業の人材育成担当者にも、研修効果を分析し、発表していってもらう流れを作っていく。

これからは教育成果のエビデンス(科学的な根拠)を示していく時代になるのである。
多くの教育に関わる人に参加してもらい、時代を前に進めようと思う。

私も学会の理事として産学を連携させた学び合いの場の提供を行っていく。
また自社のC-Learningや日米で特許商品であるActionT.C.の改良を続け、データを分析・発表することを通じて日本のLearning Analytics(LA)の時代の到来に寄与したいと思う。

これが私の新しい決意である。

 

以上

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関連URL
・(西之園先生の論文PDF)多人数講義での協調自律学習のための学習支援システムの活用
http://www.u-manabi.org/nc/include/netcommons_file.php?path=/announcement/1/2007-01-mochizuki.pdf

・青山学院大学のiPhone活用授業の取材記事
http://www.nttcom.co.jp/comzine/archive/newdragnet/newdragnet44/index.html

・教育イノベーション番組:田村恭久先生:2012年11月22日放送(肩書きは当時)
https://www.youtube.com/watch?v=JuzXYp10Zbc

・C-Learning 3つのコンセプト
http://c-learning.jp/3c/

・タブレット活用教育わくわくラーニング
http://wakuwaku.c-learning.jp

・NPO法人 学習分析学会
http://jasla.jp/

・ケータイ活用教育研究会 会員リスト
http://lab.c-learning.jp/member.html